夏のサマー2016

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iPhoneのプッシュ通知で記憶喪失になる件について

 例えば、明日の天気を調べようとしてスマートフォンを開く。すると、友達からLINEのメッセージが届いていることに気づく。メッセージを開くと、今週末に飲もうという誘い。「OK」のスタンプを送る。LINEを閉じてホーム画面に戻ると、グノシーの更新通知が届いている。グノシーを開いて最新のニュースをチェックする。すると、LINEに友達からの返事がくる。それにスタンプを返す。

 ・・・あれ? 最初の用事はなんだったっけ? 何のためにスマートフォンを開いたんだっけ?

 こんな風に本来の目的を見失って、プッシュ通知のままにアプリを回遊するなんてことが、僕にはよくある。
 アプリのプッシュ通知は人を記憶喪失にさせる魔力がある。

 しかし、プッシュ通知はひたすらに便利なので、今後ますます浸透していくだろう。昔みたいにメールが届いているか確認するためにメールボックスを何度も開いたり、記事が更新されているか確認するためにウェブサイトに何度もアクセスしたりする必要がなくなった。
 わざわざ見に行って、何にも変わっていなかったときの侘しさといったら他にない。

 近いうちに、こういうこともプッシュ通知されるようになるだろう。

 例えば、特定の人間が近づいたらプッシュ通知がされる。
 相手の生体情報を登録しておき、半径500メートル以内にその人が近づいてくれば、それがプッシュ通知される。
 会いたくない人でも、逆に会いたい人でもいいだろう。とにかく特定の誰かが近くに来たことを通知してくれるのだ。自分の命を狙っている人がいたら、その人を登録しておくと便利だろう。

 殺意もプッシュ通知されるようになる。
 iPhoneに持ち主への視線を感じ取る機能をつけ、まず視線が向けられているか感知する。
 次にその視線の中にある感情を読み取り、そこから殺意が読み取れれば、プッシュ通知をする。
 iPhoneの画面に「あなたに殺意が向けられています」と表示され、それによって素早く対策が立てられる。近くに武器に使えるものがないか探す、とか。

 相手の「隙」もプッシュ通知される。
 対戦相手の隙を突いて攻撃するのがケンカの鉄則だが、素人には難しい。
 なので、相手が隙を見せたとき、iPhoneがそれを感知してプッシュ通知してくれる。
 iPhoneのプッシュ通知に従って攻撃を仕掛けていけば、自然と相手を倒せるのだ。

 もちろん、相手もプッシュ通知を駆使してくるので、一筋縄にはいかないだろう。だけど、プッシュ通知がないよりはマシだ。

 世界はどんどん便利になっていく。敵から命を狙われていても、iPhoneが守ってくれる。

 お腹が空いたら「ご飯の時間だよ」とプッシュ通知してくれる。
 眠くなったら「寝ましょう」とプッシュ通知してくれる。
 恋人に振られたら「もっと良い人がいるよ」とプッシュ通知してくれる。
 カラオケでJ-POPを歌ったら「(コーラス)」とプッシュ通知してくれる。
 TOEICの点数が低かったら「今回はたまたま問題が難しかったね」とプッシュ通知してくれる。
 ボーナスが支給されたら「パァーッと使っちゃおうか」とプッシュ通知してくれる。
 結婚したら「おめでとう。きみにピッタリの相手だと思うよ」とプッシュ通知してくれる。
 死期が近づいたら「きみと一緒にいれて楽しかったよ」とプッシュ通知してくれる。

 そんな世界がもうすぐやってくる。

(おわり)

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