夏のサマー2016

夏の間だけ毎日更新されるブログです

食券機のシステムが、世界のすべてに導入されればいい。

 たまに飲食店に対して、「あの店はハードルが高い」と言ったりする。
 その理由は値段が高級だったり、常連しか受け付けない空気だったりするのだけれど、僕にとってハードルが高い店は、「食券機がない店」だ。

 食券機のない店は、懸念事項が多すぎる。

 店員を呼ぶとき、ちゃんと適切な大きさの声が出るのか。
 聞き取りやすい発生で喋れるのか。
 スムーズに注文を伝えられるのか。
 メニューの名前を間違えたりしないか。
 そもそもこの店はテーブルで頼むのか、カウンターで頼むのか。
 注文のフローを間違えたりしないか。
 間違えてしまい、他の客に迷惑をかけてしまわないか。
 間違えてしまったことで、恥ずかしさのあまり、味がわからなくなったりしないか。
 味がわからなくなったことで、満腹感が得られなくならないか。
 満腹感が得られないことで、際限なく食べてしまわないか。
 際限なく食べてしまうことで、地球から食料がなくなってしまわないか。
 地球から食料がなくなることで、人類が滅亡してしまわないか。

 ざっと挙げるだけでも、これだけの懸念事項がある。
 それに対して、食券機は楽だ。注文を決めたらボタンを押して、店員に渡すだけ。何も心配事がない。

 僕は食券機を開発した人に、ノーベル賞を贈りたい。レストランの注文を格段に効率化した功績で、だ。

 そして、このシステムをいろんなところに適用してほしい。

 例えば、病院。
 医者に見てもらうときって、口で伝えなきゃいけないですよね。でも、僕なんかは緊張しちゃって上手く話せず、ぜんぜん100%伝わった気がしない。
 だから、病状をすべて食券機のように伝える。

 まず、モニターに全身図が出ていて、どこに異常があるのかをタッチする。
 そのあと「痛い」「かゆい」「腫れてる」「違和感がある」などのボタンが表示されて、自分の状態を選択する。
 医者はそれを見て判断する。コミュニケーションする必要はない。

 もちろん患者が操作を間違えたり、自分の症状をよくわかっていなかったりすることもある。そんなときは医者が見抜いてほしい。一目で。

 他にも、服屋にあったら便利だ。
 店にあるすべての服がモニターでカタログ化されていて、それをタッチすると、服を持ってきてくれる。店員とのコミュニケーションは、サイズの確認だけだ。

「これ、Sサイズなんすよねー。小さめのサイズなんです」

 それぐらいしか言われない。

 食券機の発達でありとあらゆるコミュニケーションがなくなっていく。
 すべてのコミュニケーションが食券機を通して行われるようになるのだ。

 例えば、恋愛も食券機で行われるようになる。
 男が「好きです」の食券を買って、女に渡す。すると、女が「ごめんなさい」の食券を買って、男に渡す。
 就職活動も就活生が「面接にきました」の食券を面接官に渡して、面接官が「不採用です」の食券を就活生に渡すだけだ。

 口に出すと言いにくいことが、食券機を通すとカンタンに伝えられるようになる。

 こんなことだって可能だ。
 父親が「実はお前は俺の息子じゃないんだ」という食券を買って、息子に渡す。
 息子は戸惑うが、「そんなこと関係ないよ。父さんは父さんだ」という食券を買って、父親に渡す。
 父親は涙をこらえて「泣く」という食券を買う。息子も買う。お互いに泣く。

 こんな複雑なコミュニケーションも、食券機を用いれば容易に可能だ。そういう未来がもうすぐやってくる。

(おわり)

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