夏のサマー2016

夏の間だけ毎日更新されるブログです

マウスのボールはどこへ消えたんだろう?

 若い人は知らないかもしれないが、昔、マウスにはボールが入っていた。
 マウスと机が接地する面に、文字通りの丸いボールが入っていて、その転がり具合でマウスポインターが動いたのだ。誰もがゴロゴロゴロと転がして、パソコンを操っていた。
 このボールがゴミを巻き込むと、接触が悪くなって、マウスポインターの動きも鈍くなってしまう。だから、定期的に掃除をして、ゴミを取り除かなければいけなかったのだ。
 デジタルの最新型であるパソコンは、こんなアナログな原理で動いてた。

 今から15年ぐらい前、僕が小学生のときに、学校のパソコン室にあるマウスからボールが無くなるっていう事件が起きた。
 騒ぎにはなったが、誰かのイタズラだろうってことで、特に犯人探しは行われずに処理された。大人になってから「自分の学校でも起きた」という声を聞いたことがあるので、よくあることなのかもしれない。
 マウスのボールにある何かが、小学生のいたずら心を刺激するのだろう。

 盗まれたボールはどうなったんだろうか? 捨てられたのかもしれないし、コレクションとして保管されたのかもしれない。
 だけど、今でもたまに思うのは、ボールは盗まれたんじゃなくて、ボールに意識が芽生えて、自らの意思で脱走したんじゃないかってことだ。

「もう誰かに転がされる人生は嫌だ」
 そんなスローガンの元に、彼らは立ち上がる。教師や警備員の目をかいくぐって大脱走が始まる。見つかったらまた暗いマウスの中に逆戻りだ。
 そうやって彼らは学校を抜け出し、ネコに追いかけられたりしながら、コロコロコロコロと転がっていく。彼らの「ベストプレイス」を求めて。
 彼らは成田空港に忍び込むと、アメリカ行きの飛行機へと乗り込む。そしてカリフォルニアへと旅立つのだ。
 そこでコロコロとさらに進んでいき、彼らが行き着くのはGoogleの本社だ。

Googleってなんか自由らしいよ」

 パソコン少年からそう聞きかじっていたので、彼らは一様にGoogleを目指す。そういうマウスのボールが全国、全世界からGoogleの本社へと向かっていく。自由だから。業務の20%は個人的なプロジェクトに使っていいらしいから。オフィスが子ども部屋みたいになっているらしいから。そんな噂を聞いたから。

 そんな感じにGoogleの本社にはマウスのボールがいっぱい落ちているんだと思う。あれだけ広い敷地があるんだから、そんな一画があってもおかしくない。そこではマウスのボールが白ワインを飲んだり、リッツを食べたりしながら、優雅に暮らしているんだ。

 ・・・っていうアニメーションを考えたのだけど、ピクサーさん、どうですか?

(おわり)

Twitterやっています
https://twitter.com/kossetsu

Facebookはこちら
https://www.facebook.com/kikuchi.ryo.14