携帯電話の進化を見れば、「未来は明るい」とわかる。
古本屋で買ったムロタニ・ツネ象の『まんが科学偉人伝』を読んで、僕はひどく感動してしまった。
そこでは丸々一章、地動説の発見と証明にかけた科学者たちが紹介されている。
ニコラス・コペルニクス。
ティコ・ブラーエ。
ガリレオ・ガリレイ。
ヨハネス・ケプラー。
コペルニクスが着想し、ティコ・ブラーエがデータを集め、ガリレオが検証し、ケプラーが実証した。
地動説はたった一人の独創ではない。先人の考えを継承し、自分なりの検証を加えて、それを次の世代に引き継ぎ、そうやって何十年もかけて出来上がっていったのだ。
こうやって何年も、何世代にも渡って業績を積み上げていき、偉業を達成するという話に僕は弱い。泣いてしまった。
しかし、よく考えてみたら身近にあるものはどれも、先人の業績を継承し、どうやったらもっと良くなるかと試行錯誤されてきたもののはずなのだ。
例えば、携帯電話。
これは最初、肩がけのとても大きなものだった。それを改善しようとまずはどんどん小さくなっていった。
いろんな人が試行錯誤して、手のひら大に収まるようにしたら、次はどんな機能が追加されたらもっと良くなるだろうかと考えだした。誰かが「インターネットに繋がったら便利だ」と思い立ち、携帯電話専用のインターネットブラウザが開発された。
その後もカメラが追加されたり、音響が良くなったり、キーボードが付いたり、試行錯誤が続いて、どんどん便利になっていった。
誰かの一人の業績ではなく、以前に作られたものを改善していった結果、手のひらで様々なことができるようになった。
そうして、画面を直接触ったらもっと使いやすいんじゃないか、とiPhoneが登場した。
スティーブ・ジョブズのカリスマ性もあって、iPhoneは「急にものすごいものが出てきた」という印象があるが、そうではない。
iPhoneはそれ以前のキーボード付きのスマートフォンをより良くしようという発想から始まっているし(それは製品発表のプレゼンを見ても明らか)、タッチパネルによる直感的な操作はすでにニューヨーク大学のジェフ・ハンが研究していた。
タッチパネルはジョブズの独創ではない。事実、LG電子が同時期に「プラダフォン」というタッチパネルの携帯電話を発表していて、進化の方向はそっちに向かっていた。
ジョブズはすでにあるものを継承し、改善して、iPhoneに取り込んだのだ。
僕はいろんなものに対して悲観的なのだけど(働いている会社が何年持つかとか)、人類の未来に関してはすごく楽観的だ。人間はどうしたって試行錯誤してしまう生き物で、思考や技術はどんどん洗練されていくはずだから。人間にはその力があるから。
暗い気持ちになったときは手元の携帯電話を見る。先人たちによる試行錯誤の塊がそこにはある。この携帯電話のように、今の状況はどんどん改善できるはずだ。
僕も歴史的な試行錯誤の一員に加わりたいと思っているのだけど、なかなか難しいです。ティッシュなしで鼻が噛めたら便利だと思うんですが、どうやったらいいんでしょう。