夏のサマー2016

夏の間だけ毎日更新されるブログです

5年間で1000冊読んだので特に面白かった5冊を選んでみた。

 今年は読書記録を付け始めてちょうど5年目。
 約1000冊読んでいたので、その中から特に面白かった5冊を選んでみた。
 ジャンルや傾向が被らないようにしたので、BEST5ではなくBEST50の中の5冊といった感じです。

海猫沢めろん『左巻き式ラストリゾート』

 作者自らDTPをやり、文字の大きさを変えたり、フォントをいじったり、手書き文字やら何やら、デザイン面での挑戦をしまくった小説。
 ストーリーも文体も疾走感があって一気に読めて、この小説を読み返すたびに「あー、文章って何してもいいんだなー」って気持ちが楽になるとともに、元気がもらえる。固定観念を溶かしてくれる。自由な気持ちになれる。「こうしなきゃいけない」なんて思い込みで、本当はこの本のように何したっていいはずなんだ、って。
 ただし、原作は18禁のエロゲーなので、そういう描写が入ります。そんなハードルを通り越して、すごく刺激的な本にはなっていますが。

山形浩生『たかがバロウズ本。』

たかがバロウズ本。

たかがバロウズ本。

 前衛的な小説を発表し、ビート世代からカリスマ視されていた作家ウィリアム・バロウズを徹底的に分析した本。彼が生み出したカットアップという手法はどういう効果があるのか、その試みは成功していたのかを軽妙な筆致で検証していく。
 本書は自由に関しての本だ。カットアップというのは雑誌や新聞の文章を切り抜き、その組み合わせから文章を組み立てるというもの。それは思考とか先入観とかから文章を自由にするものだとバロウズは考えていた。バロウズ自身、定職を忌避して自由な人生を送ろうとしていた。徹底的に自由を求めた結果、バロウズはどうなったのか。
 特定の作家の文学研究といったら間口が狭いかのように思われるが・・・これが本当に泣ける本なのだ。400ページ超あるこの本を僕は少なくとも3度、頭から終わりまで読み返しているが、そのたびにジーンと来て、なんて切ないんだと感慨に耽っている。

清田いちる『我が名は魔性』

我が名は魔性

我が名は魔性

 作者の清田いちるさんが、中学生のころに書いた小説を電子書籍化したもの。
 「魔性」というネーミング(「魔王」じゃなくて「魔性」!)にも現れている通りの荒削りな言語センスや、全体を貫く謎の疾走感に引き込まれる。
 何よりかつて中学生が書いた小説が、世界中の誰もが読めるようになるというインターネット的体験にしびれた。この本も「こんなことやっていいんだ」という気楽さを与えてくれるというか、「こうあるべき」という自分で勝手に作った制約を解いてくれる。

大前研一『敗戦記』

大前研一 敗戦記

大前研一 敗戦記

 評論家の大前研一が都知事選に立候補し、破れるまでのドキュメントと、その敗因を分析した本。
 政策が良ければ投票されるはずだと信じ、雑誌に改革案を載せ、選挙演説ではプレゼンのノウハウで説明し、と政策の普及に力を入れるが、選挙活動を一切していなかった青島幸男にあっさり負けてしまった。その絶望感と、選挙に出るまではあれだけ応援すると言っていた人がいなくなってしまったことへの恨み節が、本書の全体を貫いている。

堀井憲一郎『若者殺しの時代』

若者殺しの時代 (講談社現代新書)

若者殺しの時代 (講談社現代新書)

 若者がいつから「消費者」として企業のターゲットになったのかを調べた本。
 物騒なタイトルだけど、ユニークな視点で戦後史を読み解いている。女性誌のクリスマス特集がどう変わってきたか、などデータの持ってき方も面白い。
 同じ著者の『ねじれの国、日本』や『いつだって大変な時代』も面白いです。

そんな感じです。

(おわり)

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