夏のサマー2016

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エアコンが効いたオフィスの「着れば暑い、脱ぐと寒い」問題

 夏になるとオフィスで争いが起きる。エアコンの温度調整という争いが。
 何十人という人間が同じ場所にいて、それぞれが過ごしやすい温度は違う。なので各々が温度が上げたり下げたりして、もうむちゃくちゃで、誰かが得をすれば誰かが損をする、そんな社会の縮図のような構造が、エアコンのスイッチの周りで出来上がっている。
 そのうえ、夏は厄介な時期で、エアコンの風が寒いからとパーカーを羽織ったりすると、暑い。脱ぐと寒い。

・着てガマンする
・着ないでガマンする

 という、どっちにしろガマンしなきゃいけない状況に追い込まれてしまう。

 これはもう構造的な欠陥で、何人もの社員でエアコンを共有するとなると、こうならざるを得ない。
 なので、オフィス自体の作りを変えてしまわないと、解決できないのだ。

 僕が設計士ならば、こういうオフィスにしてしまうだろう。

 オフィス全体をサーモグラフィーで、常に計測しておく。こうすれば、どの場所がどのぐらいの温度なのかがわかる。そして、事前に社員ひとりひとりの「過ごしやすい温度」を健康診断で医学的に解明しておき、データベースに登録しておく。

 そのデータとサーモグラフィーを参照して、その社員の「過ごしやすい温度」がオフィスのどの場所にあるのかを検索する。机とイスが全自動で動くようになっていて、ガチャンガチャンとジャミロクワイのPVのように移動して「過ごしやすい温度」に移動する。

 そうすることで、社員は何もしなくても「過ごしやすい温度」の場所で仕事ができるってわけだ。

 それだけじゃない。壁には映画の『パルプ・フィクション』が流れている。音声は流れていないが、基本は会話劇なので字幕を見ているだけで楽しい。なんか、オシャレなカフェでこういうのってある。
 そうやって「顔をあげたらいつでも楽しい」状態を作ることで、気分転換を効率的にできるようになり、社員の生産性が格段にアップする。
 電話は優秀な人工知能が対応してくれるので、集中を妨げられることがない。

 さらに、壁を音が反響しやすい素材にする。それを上手いこと配置して、どんなにボソボソ喋っても聞き取りやすくハキハキした声になる空間にする。そうすることで喋ることにエネルギーを使う必要がなくなり、社員の生産性が格段にアップする。

 おまけに、顔認識で、社員の顔色を判定する。照明が自動で「元気に見える顔色」にしてくれるので、そこにエネルギーを使う必要もなくなる。そうすることで喋ることにエネルギーを使う必要がなくなり、社員の生産性が格段にアップする。

 それでも集中できないという人のために、地下に独房を用意しよう。そこには何もない。仕事する以外、何もできない。そこでしか仕事ができないという一級の社員が黙々と仕事をしている。彼らはもう何年も地上に出たことがないし、上の階で働いている人たちも、彼らの顔を見たことはない。
 出来上がった仕事が、ただエアシューターで運ばれてくる。それだけ。

 地下にいる人間は黙々と仕事をするために独自進化している。
 耳の穴が開閉可能で、手は6本あり、下半身とイスが同化している。思考をWi-Fiに乗せて飛ばせるので、会話もメールも必要がない。手のうちの1本はカロリーメイトを自動生成するようになっていて、それを食べて暮らしている。

 仕事をずっと続けていけば、いずれ人間はみんなこうなる。

(おわり)

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