夏のサマー2016

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『サタデー・ナイト・フィーバー』を見た(6年ぶり2回目)

 『サタデー・ナイト・フィーバー』を見た(6年ぶり2回目)。
 初めて見たときの印象は鮮烈だった。今の時代に『サタデー・ナイト・フィーバー』を名作だと言っている人はいない。だから、見る前の評価はとても低かった。

 一過性のブームで終わった映画。
 流行が過ぎ去ってダサくなってしまった映画。
 時代の経過に耐えられなかった映画。

 『サタデー・ナイト・フィーバー』が語られるとき、誰もが半笑いになる。昔の恥ずかしい流行が閉じ込められた、今見ると失笑ものの映画かのように。

 しかし、それはまったく違った。先入観はきれいに裏切られた。報われない若者の葛藤を描いた普遍的な青春映画だった。薄暗い後味を残すぜんぜんフィーバーしていない映画だった。

 当時の見たときの感想を僕は「はてな匿名ダイアリー」に書いている。全文引用しよう。

有名すぎて逆に見たことない映画を鑑賞してみようと思って
サタデー・ナイト・フィーバー』を手に取ってみた。


見る前の印象としてはトラボルタが頭上を指さして
ポーズを決めてるジャケットのイメージが強い。
お世辞にも今から見たらカッコいいものとはいえず、
制作が77年って知るまでは「今見たらダサい」を強調したコメディだと勘違いしてた。


しかし、中身は意外なほどシリアスだ。
ディスコという場所から想起されるような「イケイケ」的な雰囲気も、
そういうシーンも一応はあるけど、全体的には薄い。


この映画に出てくる奴らは主人公も含めてみんな「地方でくすぶっている若者」だ。


あらすじは簡単に説明するとこう。
主人公のトラボルタは高校卒業後、ペンキ屋で働いている。
賃金も低く、神父になった兄貴とは違い、自分はクズだと思い込んでいる。
そんな鬱憤を晴らすかのように彼は週末になると
同じクズ仲間たちと行きつけのディスコに行き踊り狂う。
踊りの上手い彼はそこでは「キング」としてちやほやされる。
そして、そこのディスコ主催のダンスコンテストで優勝することを目標にし、
仕事の合間を縫ってパートナー役の女性と練習に励む。


この映画、魅力的な人間は一切出てこない。
トラボルタの父親は仕事をクビになり、求職もせず毎日ぶらぶら。咎められると逆ギレ。
母親はすぐに兄と弟(トラボルタ)を比べ、嫌味ったらしい言葉を吐く。
トラボルタが家を飛び出ても外にいる仲間はみんなドロップアウトした落ちこぼれ達だ。


ダンスコンテストでトラボルタとパートナーを組むヒロインも同様。
トラボルタはディスコでたまたまヒロインと知り合い、パートナーになってくれと口説く。


このヒロインはトラボルタが住んでいる街とは川を挟んだ向かい側に居住している。
荒れているトラボルタの地区とは違い、治安のいいハイソなところだ。
しかも、彼女はホワイトカラーでいわゆる「ギョーカイ」と繋がる仕事をしている。


このヒロインが事あるごとに自分の仕事の自慢をしてきて本当にむかつく。
やれ「今日は××と食事をした」「仕事をした」だのなんだの。
有名な人間と仕事することが自己実現だと思っている悲しい女だ。
はっきり言って見た目もそんなによくない。


二人は時間を合わせてダンスコンテストに向けて一緒に歩むことになる。
クソッタレな日常を送っているトラボルタの唯一のよりどころが「ダンス」だ。
この設定を読みとって、きっとこういう展開になるだろうと予想した。


困難を乗り越えてダンスコンテストで見事優勝するトラボルタたち。
生活は変わんないけど、ダンスやってりゃ毎日が楽しい。
みんなも自分の表現を見つけて、それに打ち込むことでつまんない日常を乗り切ろうぜ!


目標に向かって頑張る若者が麗しく描かれ、すかっと爽快なエンディング。


そんなものはこの映画にはなかった。悲しくやりきれない結末が待っている。
井の中の蛙じゃ、ボケ」とトラボルタは突きつけられる。


そして、特に明るい展望が示されることもなく映画は終わる。
「うーん、たぶん今後も上手くいかないんじゃないだろうか」
そんなざらついた舌触りを残した結末だ。


ただし、鬱映画というほど暗くもないし、踊りのシーンはカッコいい。
特に中盤のパートナーに約束をすっぽかされ、トラボルタが一人で踊る場面がある。
周囲の客たちが一斉に彼に注目し、身体の動きを止め、トラボルタに見とれるのだが、
単なる演出にとどまらず、こっちにまで伝染するようなキレのある動きを見せてくれる。


そして、何よりもBGMとして使われるビージーズの楽曲がいい。
冒頭、ファッションを決めて街中を颯爽と歩くトラボルタ。重なる曲。
そして、その歌詞が「歩き方でわかるだろ? 女が夢中になる男さ」。


夢中になったのは女だけじゃなく、世界中でヒットしたこの映画。
単なるオシャレ映画じゃありませんでした。面白かったです。


 2回目に見た印象もさほど変わらない。時代の状況や周囲の環境に翻弄された若者が、空回りし、冷たい現実を突きつけられる。
 主人公の部屋に貼られているポスターが印象的だった。ロッキー、ブルース・リーアル・パチーノ。どれも成功したアメリカの移民だ。そしてジョン・トラボルタ自身も、イタリア系の移民の子どもとして育った。そこに込められたメッセージを読み取るのは容易だ。

「みなさん、一度くらいは見てみてください。良い映画ですよ」

 僕は10年後も20年後もそう言おうと思います。50年後も、100年後も、200年後も!

(おわり)

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