夏のサマー2016

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携帯電話の予測変換が、いつか人類の滅亡を予測する

 初めて携帯電話を持ったとき、強く感動したのは電話やメールができることではなく、予測変換の便利さだった。
 「あ」と入力すれば、「相田みつを」「愛してる」「ありがとう」など、「あ」で入力しそうな単語が表示されていく。
普通に入力するよりもはるかに楽で、衝撃を受けた。

 パソコンにもこれが付けばいいのに。そう思っていたので「Google日本語入力」で取り入れられたときは嬉しかった。今では書きたい文字をすべて指で打たなきゃいけなかったってことが信じられない。

 そう、僕らは今、人類史の転換点に立っている。それまでは人が文字を書く場合、一文字一文字、指を動かさなくてはいけなかった。しかし、もうそうではない。予測変換の精度は高くなりつづけ、いつか一文字だって書かなくてよくなるだろう。

 この予測変換の技術は、いろんなところに応用されていくだろう。

 例えば、スーパーでの買い物。
 Googleグラスをかけた状態で食材を一つ手に取れば、そこからレシピを予測し、他の食材の候補をいくつか出してくれる。その食材の道のりが、矢印で表示され、買い物客はそれを追っているだけで自分の買い物を終えられてしまう。
 支払いもETCのシステムを利用して、入り口を通り過ぎるだけになれば、一回も迷うことなく、人と話すこともなく買い物ができる。

 例えば、恋人との会話。
 喫茶店で待ち合わせて、「待った?」と言った瞬間に、Googleグラスに次の言葉の候補が表示される。それは相手の表情を読み取ったり、カレンダーに入っている次の予定を勘案したりして、柔軟に変わっていく。
 人工知能が恋人の性格を学習してくので、相手が喜ぶ言葉が次々と表示される。それを言っていくだけで、恋人との関係が良好になっていく。

 人類すべてのデータが集約されれば、予測できないことなんてなくなるだろう。

 「年収1億の人間なら次はこう行動する」みたいな予測を表示することだって可能だ。仕事も予測に従ってやっていけば、誰もがハイパフォーマンスを発揮することができる。あらゆる優秀な人間の行動が「予測」として共有される。

 誰だってテキパキと仕事ができ、恋愛ではスマートな会話がこなせて、家事も最大限効率化される。便利な世界ですね。

 けれど、「それじゃ予測に操られているだけじゃないか」なんて言われそうだ。反予測派によるレジスタンスが行われるようになる。でも、それだって予測されてしまうんだろう。
 そうしていつか、人類の終わりが予測されるようになる。僕らはそれをすべて予測しているけれど、それに抵抗する行動もすべて予測済みで、何もできない。
 すべて予測された状態で、人類の歴史が終わっていく。終わりの瞬間、次に生まれる知的生命体の予測だけを見て、僕らはいなくなっていく。

 何だか怖いですね。予測ばっかり見ていて、目が悪くなりそう。

(おわり)

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