もしも木村拓哉が1995年にSMAPを脱退していたら
木村拓哉が主演するSFドラマ『安堂ロイド』が始まったとき、僕はすごく期待した。何せ木村拓哉がロボットを演じるというのだから。
木村拓哉の演技は超一流である。あんなにサラッと「良い男」を演じられる人間はいない。
『あすなろ白書』や『ビューティフルライフ』の演技は今見ても息を飲むものがある。
特に『あすなろ白書』でのあすなろ抱き(後ろから覆うように相手を抱きしめること)をしながら言う「俺じゃダメか?」はドラマ史に残る名演技だ。
だけど、彼の輝きは少しずつ色褪せていった。同じような役柄なのと、実年齢との乖離で、「若ぶっている人」みたいな見え方になってきた。
だから、「ロボット」という今までにない役柄を演じると発表されたときに、僕は進化した新しい木村拓哉が見れるんじゃないかとワクワクしたのだ。
結果は……ロボットの木村拓哉は、ロボットのように演技に血が通っていなかった。人間時代の木村拓哉とその婚約者がいちゃつくシーンだけ、かつての輝きの片鱗が見えて、余計に悲しかった。
僕はよくこういうシミュレーションをする。もしも木村拓哉が1995年にSMAPを脱退して、俳優業に専念していたら? 演技を磨き、英語を学んで、海外進出していたら? 今とはまったく違った未来がやってきていたと思う。
例えば、あの映画も木村拓哉が主演していたかもしれない。
世紀末、全人類にこの映画を捧ぐ。
集結せよ。
地球最後の日、60億の明日はたった14人に託された。
集結せよ、その日は必ずやってくる。
『アルマゲドン』
主演・木村拓哉
「人類滅亡を救うの、俺じゃダメか?」
英国史上、
もっとも内気な王。
『英国王のスピーチ』
主演・木村拓哉
「新国王になるの、俺じゃダメか?」
凍った世界を救うのは――真実の愛。
『アナと雪の女王』
主演・木村拓哉
「ありのままの俺じゃダメか?」
歴史に「もしも」はないけれど、彼の演技を見て、そこにある一瞬の輝きを見せつけられるたびに「ああ……」と思ってしまう。
トラン・アン・ユン監督で木村拓哉が出演をした『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』を見ると、彼の本当にやるべき仕事はこれなんじゃないかって強く思うのだ(『2046』はちょっと短いけど、60年代パートの演技がとても良いです。ずっと見ていたい)。