夏のサマー2016

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俺は庵野秀明より上手くアフレコできるのだろうか?

 ジブリの劇場アニメ『ハウルの動く城』の主役・ハウル役を木村拓哉が演じるというニュースが流れたとき、心配になった。
 あの木村拓哉にアニメの声優ができるのだろうか? 常に木村拓哉の顔がチラついて、画面に集中出来ないんじゃないだろうか?
 しかし、それは杞憂に終わった。

 上手かったのだ。

 『風立ちぬ』の主役に庵野秀明が起用される、というニュースでも心配になった。
 庵野はアニメ『エヴァンゲリオン』を監督した演出家で、声優でも芸能人でも何でもない。「さすがに下手なんじゃないか」と不安になった。けれど、「木村拓哉の教訓」があったのでまずは見てみよう、と思った。

 下手だった。

 棒読みだった。100%の庵野秀明だった。顔がチラついた。髭を生やした無造作ヘヤーで笑っていた。
 しかし、映画自体は傑作だったので「うーん」と腕を組んでしまった。

 例えば、10年後のハリウッドで僕が大活躍しているとしよう。企画した映画が大ヒットしている。当然、セレブたちの集まるパーティーにも招待される。
 ジョニー・デップキャサリン・ゼタ・ジョーンズが酒を飲み、「明日が世界の終わりだから騒ぎましょう」って感じに盛り上がっている。
 僕はその中で白ワインを飲んだり、リッツをかじったりしながら、「ああ、俺ってセレブ」って思っている。

 そこへ宮﨑駿がやってくる。

 引退宣言を撤回し、日本からハリウッドに拠点を移していたのだ。
 その頃の僕は過剰にアメリカナイズされ、「自分の意見をオブラートに包まずに直言するのが美徳なんすわ」というメンタリティになっているので、宮﨑駿がケイト・ブランシェットと談笑しているところに割って入り、「宮崎さん」と言う。
 「宮崎さん、『風立ちぬ』の主役を庵野さんにしたの、ぜんぜんダメでしたわ。話にならんかったっすわ」と言う。
 辺りに緊張感が走る。ケイト・ブランシェットも立ち尽くしてしまう。すると、宮崎はこう言うのだ。

「じゃあ、次の主役はきみにしよう。そこまで言うなら庵野より上手くできるよね」

 こんな状況を何度もシミュレーションしている。そうなったときに、はたして僕は庵野よりもベストな演技をできるのだろうか。

 鈴木敏夫プロデューサーも血迷って、「いいね。もう完璧な素人、声優経験も何もないし、芸能人でもない人がやった方が、リアリティあるよね」と口走ったら、そこで僕に決まってしまう。そして人間だったら、その可能性を誰もが抱えているのだ。

 宮崎アニメを素人を声優に起用するので、僕らにもオファーが来る可能性は十分にある。

 僕は庵野秀明より上手くアフレコできるのだろうか? ジブリ映画の中に溶け込めるだろうか? この問題にどう対処したらいいか、ずっと考えている。あなたならどうするだろう?

(おわり)

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