映画館とユビキタス社会、集中力の未来はこうなる?
映画館が好きでよく行っている。「映画館の魅力って何だろう」と考えるとやっぱり「映画を見るしかやることがない」ってことだ。
今の時代はやろうと思えばどこでだって映画を見ることができる。
リビングでくつろぎながら。
パソコンデスクの前で、作業の合間に。
スマホ片手に電車移動しながら。
だけど、映画館と違って、テレビやPCは映画以外の情報が絶えず入ってきてしまう。
CMが流れる。
家族が話しかけてくる。
クライアントからのメール。
友達がLINEで送ってくるメッセージ。
トイレの誘惑。
電車が目的地に着く。
何だか分からないけど他のことがしたくなる。
ネコが膝に乗ってくる。
そのたびに気持ちが分断されて、集中力が途切れる。テレビをつけながらスマホをいじってしまったり、再生時間と時計を交互に見たりしてしまう。
「のめり込むほどの映画じゃないんだよ」「きみに根気と集中力がないだけさ」と言ってしまったらそれまでだけど、それ以外にも要因がある気がする。
個人的な感覚でランキングを作ると、映画を見ていて集中力が持つのは以下の順番だ。
1位 映画館
2位 テレビ
3位 スマホ
4位 パソコン
こうやって並べてみるとわかるのは、メディアとしてやれることが多いほど、集中力がなくなってしまうってことだ。
スマホを起動した途端、アプリの通知が気になって開いてしまい、本来の目的を見失うのはよくあることです。
つまり、メディアとして便利になればなるほど、人間は集中力を失ってしまう(少なくとも僕は)。
これからIoTだのユビキタスだの、そういった社会が到来すると言われている。
すべての器機がインターネットと繋がり、ものすごく便利な世界がやってくると言われている。
いつでもどこでもネットワークから情報を取り出せ、発信することもできる。
そうなると、何に対しても集中できない世界がやってくるんじゃないだろうか。
あれもこれも、いつでもどこでも、わいわいわちゃわちゃ。
洗濯物をしようとして洗濯機に電源を入れると、「友人からメールが届いてます」と言われる。
受信ボックスを開くと、Amazonからリコメンドメールが届いている。最新の予測行動学を反映させたそのリコメンドシステムは、買うよりも前にオススメ本を配送してしまう。何に興味を持ち、購入するかが事前に分かっているからだ。
だから、そのリコメンドメールは「配達完了のお知らせ」で、郵便受けにはもう本が届いている。
ポストを開けると、指の汗を感知して「風邪気味ですね。病院に行きましょう。予約しておきました」とポストに言われてしまう。
「ああ、そうなのか」と思って部屋着から着替えると、服が「その組み合わせ、最悪ですよ。ネット投票で80%の人が無しだと言っています」と言ってくる。
半数以上の人が有りというコーディネートを見つけて、靴を履くと、「最近、運動不足ですね。ウォーキングしましょう。コースを設定しました」と靴が言う。
たっぷり1時間歩いて、クタクタになって家に戻ってくると、マッサージ師が部屋の中で待っている。疲労を察知した身体が予約したのだ。
そうしていつの間にか日が暮れて、洗濯物はカゴに残ったままだ。情報化社会ってこうなるかもしれませんね。
そんなことを映画館で、最新の洋画を見ながら考えていました。ぜんぜん集中できてませんね。やっぱり個人の資質なんだろうか。
(おわり)